
相続登記は、条件が整っていれば自分でできます。
ただし、「相続人が1人・不動産が1つ・遺言書あり」のような単純なケース限定です。
それ以外のケース、例えば相続人が複数いる、名義変更をしていない不動産が複数ある、数十年放置されていた等は、専門家に依頼したほうが時間・コスト・リスクのすべてで有利になります。
「自分でやるか、頼むか」の判断基準を、この記事で明確にします。
執筆者(イシトチ不動産 小川)

石川県・金沢市を中心に不動産の名義変更(相続登記)をサポートしているイシトチ不動産の小川です。
私は、不動産の仕事を始めて間もない頃、お客様から「担当を変えてほしい」と言われたことがあります。
決済の段取りに必死で、事務的な手続きを優先してしまい、何千万円という取引を前に不安を抱えているお客様を、完全に置いてきぼりにしていました。
あの経験から、手続きよりも先に、情報整理をしてお客様の不安を取り除くことが、何よりも先だと気が付きました。
このサイトでは、不動産の名義変更(相続登記)について、お客様自身で情報整理できるような記事を書いています。
情報整理できれば不安もだいぶ無くなります。ぜひ、参考にしていただき、次の一歩を考えてみてください。
なぜ「自分でできる」と「頼むべき」に分かれるのか?

相続登記は、法律上、本人申請が認められている手続きです。法務局のホームページにも申請書のひな形が公開されており、書類さえ揃えれば誰でも申請できます。
では、なぜ司法書士に依頼する人が多いのか?
理由は、最低限の法律の知識が必要なことは言うまでもありませんが、「書類を揃えること」と「書類を正確に作ること」の難易度が、ケースによって桁違いに変わるからです。
たとえば、相続人が子ども1人だけで、遺言書もあり、不動産も1つだけという状況なら、必要な書類は10点前後。法務局の相談窓口を1〜2回使えば、自分で完結できる可能性があります。
一方、相続人が配偶者+子ども3人+前妻との間の子ども1人という状況で、しかも30年前から名義変更していない不動産が複数あるとなると、取得しなければならない戸籍謄本だけで20〜30通を超えることがあります。
それを束ねて、正確な遺産分割協議書を作成し、誤りなく申請書を仕上げる。これを仕事の合間にやるのは、現実的ではありません。
自分でできるケース:3つの条件
以下の3つをすべて満たしている場合は、自力申請を検討する価値があります。
① 相続人が少なく、全員と連絡が取れる
相続人が配偶者と子ども1〜2人程度で、全員が同じ認識を持っており、署名・押印のやりとりもスムーズに進められる状態。
② 不動産が1〜2件で、名義が明確
相続する不動産が少なく、登記簿の名義が亡くなった方の単独所有になっている。共有名義や、祖父母の代からの未変更物件が混在していない。
③ 遺言書がある、または遺産分割で揉めていない
相続人全員がすでに合意しており、誰が何を取得するかが決まっている。遺産分割協議書の内容に争いがない。
この3条件が揃っていれば、法務局の「登記相談」(要予約)を活用しながら自力で進めることは可能です。費用は登録免許税のみ(固定資産税評価額×0.4%)で、司法書士報酬の5〜15万円は不要になります。
法務局では登記の無料相談をおこなっていて、予約制(約20分)で無料で相談することができます。ただし、必要書類や書き方は教えてもらえますが、法的な判断や書面作成の代行はしてくれません。法的な判断が気になる方は、市役所などで定期的に実施される司法書士や弁護士などの無料相談をご活用ください。
法務局の無料相談は下記にご連絡ください。
金沢地方法務局の相談窓口 (石川県)
本局 (金沢市新神田): 076-292-7827(相談日:月~金)
管轄区域:金沢市、かほく市、白山市、野々市市等
小松支局: 0761-22-6301(相談日:月・水・金)
管轄区域:小松市、加賀市、能美市
司法書士に頼むべきケース:6つのパターン
以下のうち1つでも当てはまる場合は、専門家への依頼を強くおすすめします。
① 相続人が複数いて、一部と連絡が取れない
住所不明の相続人がいると、住民票・戸籍の附票で現住所を調べるところから始まります。それでも見つからない場合は家庭裁判所への申し立てが必要になることもあります。
② 前妻・認知した子・養子など、複雑な家族関係がある
相続人の確定だけで戸籍謄本が大量に必要になります。1通でも漏れると法務局から差し戻しになります。
③ 相続人の中に認知症の方や未成年者がいる
認知症の相続人には成年後見人の選任が必要です。未成年の相続人には特別代理人の申立てが必要になることがあります。いずれも家庭裁判所の手続きが絡むため、司法書士または弁護士なしで進めるのは現実的ではありません。
④ 祖父母・曽祖父母の代から名義変更していない
世代をさかのぼった相続(数次相続)は、現在の相続人が10人を超えることも珍しくありません。相続人の一人が亡くなっていれば、さらにその相続人が加わります。石川県内でも、このパターンのご相談は非常に多いです。
⑤ 不動産が複数の市区町村にまたがっている
申請先の法務局が異なるため、それぞれの管轄ごとに申請書を作成・提出する必要があります。手間は件数分だけ増えます。
⑥ 2024年の義務化以降、期限が迫っている
相続を知った日から3年以内に登記することが義務になっています。過料(10万円以下)を避けるためにも、期限が近い場合は専門家に依頼してスピードを優先すべきです。
【比較表】自分でやる場合 vs 司法書士に頼む場合
固定資産税評価額が1,500万円の不動産1件の場合、登録免許税は6万円です。これは自分でやっても司法書士に頼んでも変わりません。
自分でやることで浮く費用は司法書士報酬の部分だけです。ただし、書類収集や申請書作成にかかる時間(シンプルなケースでも10〜20時間程度)と、差し戻しになったときの精神的コストは計算に入れておく必要があります。
| 項目 | 自分で申請 | 司法書士に依頼 |
| 登録免許税 | 評価額×0.4% | 同じ |
| 戸籍謄本等の取得費用 | 1通450〜750円×必要枚数 | 同じ |
| 司法書士報酬 | 0円 | 5〜15万円程度(ケースによる) |
| 法務局への交通費・時間 | 自己負担 | 後日請求される場合あり |
| 不備による差し戻しリスク | 高い | ほぼなし |
「とりあえず自分でやってみて、詰まったら頼む」はおすすめしない

相談現場でよく見られる失敗パターンが下記のようなものです。
途中まで自分で進めた後に専門家に引き継ぐと、「何をどこまでやったか」の確認作業が発生し、かえって時間と費用がかかることがあります。
また、書類の取得順を間違えると、同じ市区町村に何度も足を運ぶことになります。
最初に「自分でやるか・頼むか」を決め切ってから動き始めるのが、結果として最も効率的ですが、そもそも、相続の手続きをする場合、民法などの最低限な法律知識がなければ難しいかもしれません。
まとめ
判断に迷ったら、この質問に答えてみてください。
- 相続人は全員と連絡が取れますか?
- 不動産の名義は被相続人の単独名義ですか?
- 祖父母の代から変更していない不動産はありませんか?
- 相続人に認知症の方・未成年者はいませんか?
1つでも「わからない」「いる」が出たら、まず専門家に状況を話してみてください。相談だけなら費用はかかりません。
また、この記事を読んで、あなたの状況はどちらに近かったでしょうか?動き出すための判断はできそうですか?
もう一度だけ、シンプルに整理します。
相続人が少なく・不動産が1〜2件で・全員の合意が取れているなら、自力申請は現実的な選択肢です。登録免許税(評価額×0.4%)以外の費用はかかりません。
それ以外のケースは、時間・ミスのリスク・精神的コストを考えると、専門家に依頼したほうが総合的に安くつくことがほとんどです。
一つだけ、お伝えしたいことがあります。
「相談するのは、全部決めてから」と思っている方が多いのですが、実際には逆です。何も決まっていない段階で話してみることで、「自分のケースがどちらに当たるか」が初めてわかることがほとんどです。
相談だけなら費用はかかりません。「どこから手をつければいいかわからない」という状態でも、それをそのままお話しください。
石川県・金沢エリアでの相続登記(不動産の名義変更)のご相談は、お気軽にどうぞ。あなたの状況を一緒に整理するところから始めます。
下記の記事もご参考ください。


名義変更を放置すると 売却できない・過料が科されるなど 深刻なリスクがあります。 まず基本を確認しておきましょう。


※本記事では、不動産実務や相続に関する一般的な情報をわかりやすくご紹介していますが、税法や制度は改正されることがあり、実際の手続きや税金の取り扱いはケースによって異なります。実際に相続が発生した場合や、具体的な対応をご検討の際は、税理士・司法書士などの専門家にご相談いただくことをおすすめします。
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